「地方消滅」の著者・増田寛也さんインタビュー
人口急減社会をどう生きるか
赤字路線でも地方創生の起爆剤になる」と言う増田さん=東京都千代田区、佐藤修史撮影
2020年から50年までに全国1729自治体の4割にあたる744自治体が人口減少によって〝消滅〟する――。2024年に発表された「消滅可能性自治体」リストは、10年前に初めて公表されたリストとほぼ同じ傾向を示し、改めて国民に衝撃を与えた。この間、政府や地方自治体がさまざまな対策を講じてきたが、少子化や若者の人口流出に歯止めがかかっていないことが浮き彫りになった。14年と24年の双方の調査で中心的な役割を担った増田寛也さん(74)=元岩手県知事、元総務相=に実情を聞いた。
—— 出生率の観点から20~39歳の女性が5割以上減少する自治体を「消滅可能性都市(※注)」として、2014年にリストを発表しました。この調査に着手したきっかけを聞かせてください。
(注)2014年の発表の際には「消滅可能性都市」としたが、24年発表では「消滅可能性自治体」と変更した。内容は全く同じ概念。
私が岩手県知事に就いたのが1955年。当時、岩手や青森、秋田の北東北3県ではすでに人口減少が始まっていました。ただ、全国的にはまだまだ人口は増えていて、人口減少の問題というのは全国知事会でも問題にされず、ごく一部の田舎の県の話だという雰囲気がありました。
岩手県の総合計画をつくる際、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の人口推計を参照し、人口が減る前提で立案しました。経済界をはじめ、多くの方から「人口を増やす施策をするべき県が、減る前提で計画するとは何事か」と厳しい意見が届きました。社人研の推計は、国内の各種統計の中でも最も正確な予測とされています。市町村ごとに詳細なデータが出ているのですが、市町村長さんもほとんどご覧になっていない印象でした。
実際、県内ではすでに学校の統廃合が進んでいました。2007年まで知事を務めている間、私は毎年、成人式に出席しましたが、若者の数が目に見えて減っていました。それでも行政関係者の危機感はあまり感じられず、人口減少問題をいずれ世に問う必要があると思っていました。
07年8月から翌年9月まで総務相(安倍晋三内閣~福田康夫内閣)を務めたのですが、じつは08年に日本の総人口がピーク(1億2808万人)になり、それから減り始めていたんです。それが分かったのは10年の国勢調査です。これを機に、人口問題を日本全体の問題として問える状況になったと考えました。このころ、野村総合研究所(民間のシンクタンク)の顧問に就いたこともあり、国勢調査をベースに細かく分析することにしました。

「存続可能性」か「消滅可能性」か
—— 「消滅可能性」という表現に感情的に反発した人も少なくなかったようです。
最初は存続可能性自治体の方から上品に書こうとしたんですが、出版社の編集者から「消滅可能性という尖った言葉で世に問うべきだ」と提案され、なるほどそうかと、腹をくくったわけです。
想像通り、非常に強く反発する声もありました。反発の内容は二つに大別されます。一つは、地方自治体のみなさんが「人口を増やそうとがんばっているのに冷や水を浴びせられた」といった反応。もう一つは、「女性は子を産むべきだ」という価値観を押し付けているという批判。後者については、内部でも議論したのですが、人口問題をめぐっては学会でも若年女性の数を推計に用いるのが一般的です。
いずれの反発も必ず出てくると覚悟していましたが、やっぱり人口減少の問題を正面から世に問う方が重要だと考えたわけです。
—— 10年後の24年に改めて同様のデータをまとめ、発表されました。
10年後にどうなったのか、責任を持って出すべきだと判断しました。最初の調査では、東日本大震災の影響で福島県内が対象になっていないということもあったし、発表後の10年間の政府の取り組みを検証する必要性も感じていました。
2030年の国勢調査で3回目の調査をするかどうかはわかりません。私は高齢になりますが、どなたかが分析を試みるかもしれません。
—— 2度の調査・発表は、社会にどんな影響を与えたのでしょうか。
データが中心ですから、一般の人にどれだけ伝わったかはともかく、問題を〝見える化〟した効果はあったと思います。多くの首長から「データが示されたので議論がしやすくなった」という声が届きました。経済界では、労働力確保への危機意識が高まったと思います。人手不足や外国人労働者の問題に直面している企業・団体からは「もっと詳しく話をしてほしい」との要望が相次ぎました。
そして何より、国がいろいろな政策に乗り出しました。それには問題点も残っているのですが、国政のテーマとして採り上げられるきっかけには間違いなくなったでしょう。たとえば、政府は2014年、「まち・ひと・しごと創生本部」を内閣に設置し、出生者数を死者数が上回る「自然減」と若者が地方から離れる「社会減」の同時解決をめざしました。残念ながら、国民全体を巻き込む運動論が欠けていて、大きな成果にはつながっていませんが。
自然減の対策については、国の役割が大きい。ドイツでは、メルケル政権下で少子化対策の予算を大幅に増やし、保育所を増やしたり労働時間を短縮したりした結果、出生率を向上させた実績があります。日本の子育て関係予算は全体の2%弱と、EU加盟国などと比べ、非常に割合が低くなっています。
人口急減と高齢化が進む社会の姿
—— 社人研の中位推計は2100年の人口を現在の半数の6300万人と予測しています。買い物難民が増える。病院にも行けない。黒字の会社も人手不足で廃業する。耕作放棄地も空き家も増える。そんな社会が想定されるのでしょうか。
人口が減ると、労働力人口が減るのはもちろん、消費者人口も減り、市場そのもの、社会そのものが急速に縮小していきます。重要なのは6300万人になったときの高齢化率が40%を超えていることです。街を歩いている人の多くはお年寄り。公共交通も維持が困難です。バスだって、お客がいても運転手が足りず便数が減る。介護も立ちゆかない。介護ロボットの進化が注目されますが、入浴と食事と排泄はやっぱり人手が必要です。独り暮らしのお年寄りの話し相手がAI(人工知能)搭載のロボットになるとか……。すべての職種をAIやロボットが代替できるわけではないし、代替するには相当な時間もかかります。当面、技術の進歩に期待するのは難しいでしょう。
日常の買い物、公共交通、病院など福祉施設の三つの要素は何とかして維持しなくてはいけないんですが、多くの地域で困難になるでしょう。社人研の低位推計では、同年の人口が5千万人に減る可能性さえ指摘されている。日本は〝人口急減社会〟なのです。
急激な人口減少は、社会に三つの分断を招く恐れがあります。現役と高齢者による世代間の分断、都市と地方による地域間の分断、それから増え続ける外国人と日本人の分断です。社会保障制度をはじめ、さまざまな枠組みを見直す必要があります。
—— 増田さんたちの2024年の発表では、人口減少の流れを変えるため、「定常化戦略」(人口減少の速度を緩和させ、人口を安定させる)と「強靭化戦略」(少ない人口でも成長力のある社会の構築)という二つの提言をしています。定常化戦略では、2100年までに人口を8千万人の水準で安定化させるという目標を掲げ、そのための条件を出生率2・07(2024年は1.15)としていますが、到達できるでしょうか。
正直、難問です。出生率をそこまで上げるのは無理だとはっきり言う学者もいます。それでも、私は目指すべきだと思っています。あらゆる施策を否定せず、何でもありでやってみないと。
発表した提言には、若年世代の所得向上や雇用の改善、共働き・共育ての実現、多様なライフサイクルの選択が可能な社会……などを挙げています。それぞれの女性にはいろいろなバリアがあるから、それらをできるだけなくしていく。男女の出会いを増やすとか、子を産んだあとの児童手当の拡充とか、住宅政策も検討していいでしょう。
しかし、今の若い世代の価値観は多様です。ネットに「子を持つのはリスクだ」というような声が蔓延しているなかで、出生率を上げるのは至難の業だと思います。ほかの多くの先進国でも下がっていますし。私が、もうほとんど可能性がないような物言いをするのもどうかと思いますが、それも冷静な事実です。非常に難しいけれども、やっぱり目標値を持ったうえで、男女が尊重される住みやすい社会、多様な価値観がある社会づくりを目指すことが大事ではないでしょうか。
—— 強靭化戦略とは、具体的にどんなことをするのでしょうか。
生産性の向上が大事です。生産性の低い企業、産業、地域をいかに改革していくか。すべてを生産性という尺度で判断するわけではありませんが、人口減少地域では、医療、交通、エネルギーなど生活に不可欠なサービスの質を高め、持続性を維持しなくてはなりません。
人口が少ない地域が成長するには、一人ひとりが活躍するしかない。たとえばIT事業をしつつ、農業やスキー場での仕事もこなすような「一人多役」の社会が求められます。教育の質的向上も含めた「人への投資」が欠かせません。子育て世代には、子育てや学びに使える〝可処分時間〟を増やす必要もあります。働き方の多様性が影響しますので、企業の役割がとても大きいと考えています。社会の枠組みを変えるとともに、個人が自分のできる範囲で努力していくことが社会全体の強靭化につながっていくのだと思います。
人口の二極化を防ぐ「地域生活圏」とは
—— 「消滅可能性都市」の発表後、全国の市町村が「若者の都市への流出を防ごう」「移住者を増やそう」などと、人口の社会減対策に躍起になっています。日本の総人口が減るなかで自治体ごとに奪い合っている状況をどう見ていますか。
日本全体でみると、意味はないですよ。首長は選挙で選ばれますから、住民からのプレッシャーもあってどうしてもマクロの視点を持ちにくい。でも、私は地方の努力に対して否定的なことは言いたくありません。30年後に「あれは意味がなかったね」と結果論を言うことはできても、今まさに必死にもがいている地域に水をかけるようなことは言うべきじゃないと思っています。ここは、どうしてもダブルスタンダードになってしまいますね。
—— ふるさと納税と一緒で、競争することで生まれる〝発明〟もあるかもしれません。
そう。政策の競い合いはやってもらわないと困るわけです。
—— とはいえ、消滅可能性が高い自治体ほど官民ともに財政基盤が弱く、自然減対策も社会減対策も取りくいでしょう。
今のままだと、弱いところはどんどん弱くなり、それなりの都市に人口が集まります。そうした二極化の傾向にどこまで抗えるか、踏ん張りどころに来ているのです。
—— 道州制や市町村合併のような広域自治の可能性はどうでしょうか。
道州制については時機を失したというか、政治的にもかなりの労力が要るので、今はむつかしいでしょう。今後30~40年たてば驚くほど人口が減っているでしょうから、改めてそういう議論が出るかもしれません。
自治体の人口が数百人くらいに減ってくると、市町村合併の動きは自然発生的に出てくるでしょう。伊豆諸島の東京・八丈町では、離島の八丈小島を廃村(1969年に全島離島)にした歴史があります。そうしたケースも出てくるのではないかと思います。
運用上の変化も出てくるでしょう。たとえば、これも離島の例ですが、東京都の青ヶ島村は、人口が約170人しかいないのに村議会議員がいて、当然ながら選挙もしている。でも、あの規模なら、島民が全員集会を開いて意思決定をした方が合理的な気もします。
—— これからは限りある財政をすべての市町村に万遍なく振り分けるのでなく、中核拠点都市に「選択と集中」をするべきだと主張されています。中核拠点都市が魅力を持てば、地方の若者が東京圏域に流出するのを防ぐ〝ダム機能〟をはたす、と。
地方都市のダム機能については、私が総務相だったころに福田康夫首相もしょっちゅうおっしゃっていました。群馬県高崎市などを引き合いに出していましたね。
—— 高崎は県庁所在地ではありませんが、どの程度の人口規模の都市を中核拠点都市とするのでしょうか。
私自身は「札仙広福」(札幌、仙台、広島、福岡)に次ぐ規模の都市を全国で10くらい選び、それらが各ブロックのことを考えてくれるといいなと思っています。でも、全国を10のブロックに編成するのは現実には無理ですね。国会議員や首長は地元のことばかり優先したがるわけで。
したがって、基本的には県庁所在地になりますよ。全国で40~50になります。さらに重層的に考えるなら、全国で300くらいになる「地域生活圏」(地方の中心都市を核とした市町村界にとらわれない圏域)でまとまっていくことですね。
—— 地域生活圏とは、二次医療圏(救急医療を含む一般的な入院治療が完結するように設定した区域)のようなものですか。
ほぼ一致してきます。国土交通省の国土形成計画で規定された概念です。日常の買い物、交通、医療といった生活を維持する単位としては、そのぐらいではないかという考え方です。

自治体の「水平連携」と「垂直補完」
—— なるほど。ちょっと脱線しますが、今、お話に出た交通に絡め、ここで鉄道のことをおうかがいします。増田さんは国交省のご出身で、国鉄の廃線ラッシュがあった1980年代後半に茨城県の鉄道交通課長も務めています。全国にある赤字ローカル線の今後について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
課長時代のいちばん大きな仕事は、つくばエクスプレス(TX)の建設準備でしたが、筑波鉄道の廃線(1987年)もありました。つくば万博も終わって乗客数が減った結果、サイクリングロードにしたわけです。
ただ、鉄道の役割は多様ですよね。人を運ぶ手段に限定して考えるなら、たとえばバスのほうが合理的に見える場合もあるでしょう。でも今のご時世だと、輸送だけでなく沿線全体の価値を高めるツールと考えることが大事になっています。
千葉県の銚子電鉄(通称「犬吠崖っぷちライン」)を視察しましたが、いろんなイベントをされたり面白い名称の菓子を発売したり、さまざまな工夫をされていました。赤字路線であっても、沿線住民を巻き込んで地域の起爆剤とするなら、地方創生につながると思います。乗客が少なくなったというだけで廃止にするのはもったいないですね。レールをはがせば、もう二度と作れませんから。とくに(多くの路線が廃止された)北海道を見ていると、もったいないなと感じます。情緒的な考えだけでは維持できないでしょうが、もっと住民や自治体が知恵と熱意を出してできることがあるんじゃないかという気もします。
—— 鉄道の沿線自治体が協力し合う必要性に象徴されるように、これから中山間地域では市町村単体では立ちゆかず、広域での模索が必要なのでしょうね。
市町村の職員を確保するのも難しくなりますからね。自治体同士で「水平連携」するか、「垂直補完」として県が手助けするか、その二つを組み合わせるしかないでしょう。「コンパクト」と「ネットワーク」がかぎです。コンパクトなまちづくりをし、それらをネットワークでつなぐイメージです。先にお話しした地域生活圏で、交通網や病院などをどう残すかを考えるべきです
—— 中山間地や離島に暮らす人の価値観も問われてくると思われます。増田さんは岩手県知事時代に「がんばらない宣言」をして注目を集めました。
あのときも当初はずいぶん叱られました(笑い)。汗水流すことを否定したわけではなく、東京に追いつこうとだけ考えて頑張るのをやめよう、東京と同じ価値観で努力するのを見直そうというのが真意でした。裏を返せば、岩手の価値を見直そうということです。
—— 都会と比べて、あれも欲しい、これも欲しいと思えば、あれもない、これもないという地元に対する不満になりかねません。
地方が東京とたたかっても、経済合理性の点から勝負になりません。知事時代、「小さくていいから、ディズニーランドみたいなものをつくってください」「青山や原宿にあるようなカフェを誘致してほしい」といった要望を聴くたびに、ちょっと違うんじゃないかと思ったものです。
雄大な岩手山を背景に、広大な緑が広がる小岩井農場、観光客が少なく静かで食事には獲れたてのウニが山盛りで出てくる沿岸部の民宿、冬になると小屋の煙突から煙が上がる県北の炭焼き……そんな東京にはない、希少価値のあるものこそが岩手の魅力だと言い続けました。
各地のローカル線もそれぞれの希少価値を持っているわけですよね。
鉄道沿線の資源を総動員して地方創生を
—— 高千穂鉄道の廃線跡地には、〝東洋一の高さ〟を誇った105㍍の鉄橋が残っています。いま、高千穂あまてらす鉄道の観光カートのクライマックスとして人気を集めています。
60~70㍍でも相当高いのに、100㍍を超えているというのはすごい。(写真を見ながら)ははあ、この高さだとかなり迫力がありますね。やっぱりみなさん、スマホで撮影して喜ぶんでしょうね。
—— 高千穂あまてらす鉄道は社内に地方創生事業部を設け、さまざまな事業を始めています。空き家対策の一環で、このほど空き店舗を活用して地産地消のカフェを開業しました。カフェを老若男女が集まるコミュニティー拠点として、伝統的な菓子や加工食品をつくる計画もあります。子ども食堂の機能も備え、中高生が学ぶ場としても活用します。沿線の隣町とも新たな観光事業を検討中です。
沿線の資源を総動員して地方創生のきっかけをつくるのはとてもよい試みだと思います。全国の鉄道事業者がそれぞれの取り組みを参考にして、お互いに触発されていく流れが大きくなるといい。高千穂あまてらす鉄道さんにも、ぜひ地域の人たちの声を聞き、試行錯誤を続けていただきたいと思います。そうした取り組みを自治体や各種団体が包み込むように応援して、地元でやれることをどんどん見つけて実践に移せるといいですね。
(聞き手・佐藤修史)
※インタビューは2026年3月24日に実施しました。

記者・編集者
佐藤 修史
Osafumi Sato
記者・編集者
1968年生まれ。横浜市立大学で探検部に所属。93年に朝日新聞社に入社し、新聞や雑誌の記者、編集者を務める。2022年に退社後、故郷の宮崎市で「何者でもない自分」をめざす。愛猫家。釣り、野菜づくり、料理、登山、探検、ロックンロール、ルソン戦研究など多趣味。